「比較して選んでもらう」ための設計とは
「売りたい商品があるが、なぜか選ばれない」
「価格の見せ方に工夫がない」
「比較表を作っても、効果を感じない」
こんな状況に悩んでいませんか。
比較は、顧客が購買を決定する重要なプロセスです。
この比較を「設計」することで、売りたい商品を選ばせることができます。
問題は「商品の魅力」ではなく「比較構造」にある
結論から言います。
商品の魅力は、単独では評価されません。
比較対象との関係で、相対的に評価されます。
この比較構造を設計することで、売りたい商品の魅力を引き立てることができるのです。
デコイ効果とは
行動経済学者の発見
行動経済学者ダン・アリエリーは、比較が選択に与える影響を研究しました。
彼が発見したのは「おとり(デコイ)」を追加することで、特定の選択肢への誘導が可能だということです。
エコノミスト誌の事例
有名な事例があります。
雑誌「エコノミスト」の購読プランです。
当初の選択肢
- Web版のみ:59ドル
- 印刷版 + Web版:125ドル
この場合、多くの人がWeb版を選びました。
おとりを追加
- Web版のみ:59ドル
- 印刷版のみ:125ドル(おとり)
- 印刷版 + Web版:125ドル
「印刷版のみ」を追加しました。
印刷版のみは、同じ価格で印刷版+Web版より明らかに劣っています。
誰も選びません。
しかし、この「おとり」があることで、「印刷版+Web版」が「お得」に見えるようになりました。
結果、多くの人が「印刷版+Web版」を選ぶようになったのです。
なぜこれが起きるのか
人間は、絶対的な価値を判断することが苦手です。
代わりに、相対的な比較で判断します。
「明らかに劣る選択肢」があると、それより優れた選択肢が魅力的に見えます。
これがデコイ効果のメカニズムです。
デコイ効果の使い方
基本パターン
デコイを設計する基本パターンは以下の通りです。
- 売りたい商品(ターゲット)を決める
- ターゲットより明らかに劣る選択肢(デコイ)を作る
- デコイは、ターゲットと同価格帯だが価値が低い
デコイと比較することで、ターゲットの価値が際立ちます。
価格デコイ
同じ価格で、内容が劣る選択肢を追加します。
例:オンラインコース
- 動画のみ:30,000円
- 動画+テキスト:30,000円(デコイ:動画のみと同じだが魅力がない)
- 動画+テキスト+サポート:30,000円(ターゲット)
実際には「動画+テキスト」だけのプランは中途半端で、誰も選びません。
しかし、この選択肢があることで「動画+テキスト+サポート」が「お得」に見えます。
機能デコイ
特定の機能を削った選択肢を追加します。
例:SaaS製品
- ベーシック:10,000円/月(機能A+B)
- スタンダード:15,000円/月(機能A+B+C)
- スタンダードライト:15,000円/月(機能A+C、Bがない)
「スタンダードライト」は、同じ価格でBがない分劣っています。
比較すると「スタンダード」が選ばれやすくなります。
よくある誤解
❌ 「デコイは顧客を騙すテクニック」
デコイは、選択の文脈を設計するテクニックです。
商品の価値を偽っているわけではありません。
比較しやすい構造を作ることで、顧客の意思決定を助けています。
❌ 「どんな商品にも使える」
デコイが効果を発揮するのは、比較検討が行われる場面です。
衝動買いや、すでに決まっている顧客には効きません。
❌ 「デコイは明らかに劣っていれば何でもいい」
デコイは、ターゲットと「比較可能」である必要があります。
まったく異なるカテゴリの商品は、デコイとして機能しません。
設計視点で考える
⭕ 比較構造を意図的に設計する
デコイ効果を活用するには、比較構造全体を設計する必要があります。
ステップ1:ターゲットを決める
まず、最も売りたい商品を決めます。
この商品が選ばれることで、顧客にとっても良い結果になることが前提です。
ステップ2:デコイを設計する
ターゲットより明らかに劣るが、比較可能な選択肢を設計します。
価格はターゲットと同じか近くし、価値を下げます。
ステップ3:比較しやすく提示する
3つの選択肢を並べて、比較しやすい形で提示します。
違いが一目でわかる比較表が効果的です。
具体例で考える
個人コーチの場合
- 単発セッション:30,000円(1回のみ)
- 3回パック:80,000円(約27,000円/回)
- 3回パック+フォローアップ:80,000円(ターゲット)
「3回パック」単体は中途半端で、フォローアップ付きと比較すると劣って見えます。
結果、「3回パック+フォローアップ」が選ばれやすくなります。
中小企業の場合
- 導入サポートなし:500,000円
- 導入サポート30日:600,000円
- 導入サポート90日:600,000円(ターゲット)
「30日サポート」は、同じ価格で「90日サポート」より明らかに劣ります。
比較すると「90日サポート」が選ばれます。
オンラインコースの場合
- 動画教材のみ:50,000円
- 動画+コミュニティ:80,000円
- 動画+コミュニティ+個別相談:80,000円(ターゲット)
「動画+コミュニティ」は、同じ価格で個別相談がない分劣ります。
個別相談付きが「お得」に感じられます。
倫理的な注意点
デコイ効果は強力なテクニックです。
しかし、顧客にとって価値のない商品に誘導するために使うべきではありません。
「この商品が選ばれれば、顧客にとっても良い結果になる」
この前提がなければ、信頼を損ないます。
全体像を知ることが第一歩
この記事では、デコイ効果を使った比較設計についてお伝えしました。
しかし、デコイは選択設計の一手法にすぎません。
他にどんな選択肢設計があるのか。
どう状況に応じて使い分けるか。
「売りたい商品を選ばせる」コースでは、この全体像を詳しく解説しています。
売りたい商品が選ばれない。
そんな状況を変えるための第一歩として、ぜひご活用ください。
