価格を見た瞬間に「高い」と思われる
「価格を伝えると、顧客の表情が曇る」
「値引きしないと売れない」
「価格の見せ方に工夫がない」
そんな悩みを抱えていませんか。
実は、同じ価格でも「見え方」で印象は大きく変わります。
これを「アンカリング効果」と呼びます。
アンカリング効果とは何か
結論から言います。
アンカリング効果とは、最初に見た数字が、その後の判断に影響を与える心理現象です。
人は価格を絶対値で判断しません。
何かと比較して、相対的に判断します。
その「比較対象」を意図的に設計することで、同じ価格でも印象を変えられるのです。
なぜアンカリングが効果的なのか
脳は「基準点」を求める
人間の脳は、判断を下すときに「基準点」を必要とします。
「10万円は高いか安いか」
この質問に答えるには、何かと比較する必要があります。
新車なら安い。ランチなら高い。
基準がなければ、判断できないのです。
最初の数字が基準になる
面白い実験があります。
ある不動産を見学する前に、高い見積もり価格を見せられたグループと、低い見積もり価格を見せられたグループがいました。
その後、「この物件にいくらなら払いますか」と聞くと、高い見積もりを見たグループの方が、高い金額を答えました。
最初に見た数字が「アンカー(錨)」となり、その後の判断を引き寄せるのです。
黒真珠の話
かつて、タヒチ産の黒真珠はまったく売れませんでした。
しかし、ある宝石商がこれを高級店のショーウィンドウに高値で展示し、有名誌に広告を出しました。
すると、黒真珠は「高価な宝石」として認識され、売れるようになったのです。
商品は変わっていません。
変わったのは「比較される基準(アンカー)」です。
よくある誤解
❌ 「アンカリングは騙しのテクニック」
アンカリングは、人間の認知の仕組みを活用したものです。
嘘をつくのではなく、「どう見せるか」を設計しているだけです。
定価がある商品を割引価格で売るのも、アンカリングの一種です。
これを「騙し」と呼ぶ人は少ないでしょう。
❌ 「極端に高いアンカーを置けばいい」
非現実的なアンカーは、逆効果になることがあります。
「通常100万円のところ、今だけ10万円」
あまりに差が大きいと「嘘くさい」「何か裏がある」と疑われます。
信頼性を損なわない範囲でアンカーを設定する必要があります。
❌ 「安く見せることが重要」
アンカリングの目的は「安く見せること」だけではありません。
「価値に見合った価格だと認識させること」が目的です。
場合によっては、高く見せることが効果的なこともあります。
設計視点で考える
⭕ アンカリングを設計する
価格の見え方を変えるには、いくつかの方法があります。
1. 価値のアンカー
顧客が得られる価値を先に提示し、その後に価格を見せます。
例: 「この方法で、年間100万円の売上増加が見込めます。投資額は30万円です」
「100万円の増加」がアンカーになり、「30万円の投資」が相対的に小さく感じられます。
2. コスト比較のアンカー
代替手段のコストと比較します。
例: 「この業務を社員にやらせると、月給30万円×12ヶ月=360万円。私たちのサービスは年間100万円です」
「360万円」がアンカーになり、「100万円」がお得に見えます。
3. 分割のアンカー
大きな金額を小さな単位に分割して見せます。
例: 「年間120万円」→「月額10万円」→「1日あたり約3,300円」
「1日3,300円」と聞くと、「年間120万円」より心理的ハードルが下がります。
4. 高価格オプションのアンカー
最初に高い選択肢を見せることで、本命の選択肢を相対的に安く見せます。
例: まず「プレミアムプラン:50万円」を提示。
次に「スタンダードプラン:20万円」を提示。
「50万円」がアンカーになり、「20万円」がお手頃に感じられます。
5. 順序効果を活用する
価格リストを高い順に並べると、顧客単価が上がる傾向があります。
バーのメニュー実験では、高い順に並べた方が、客単価が4%上昇しました。
最初に見る高い価格がアンカーになり、他の価格が相対的に安く感じられるためです。
具体例で考える
コンサルティングの場合
❌ アンカーなし 「コンサルティング料は月額10万円です」
⭕ アンカーあり 「この問題を1年放置すると、機会損失は500万円以上です。月額10万円の投資で、年間120万円。得られる価値の4分の1以下の投資で、この問題を解決できます」
オンラインコースの場合
❌ アンカーなし 「コース費用は15万円です」
⭕ アンカーあり 「同等の内容を学ぼうとすると、ビジネススクールでは100万円以上。個別コンサルなら月10万円×6ヶ月=60万円。このコースは15万円で、両方の価値を手に入れられます」
Web制作の場合
❌ アンカーなし 「Webサイト制作費は80万円です」
⭕ アンカーあり 「このサイトから毎月20件の問い合わせが来れば、1件あたり5万円の広告費に相当します。年間1,200万円の価値を生み出すサイトへの投資が80万円。7ヶ月目には投資を回収し、その後は純粋な利益になります」
数字の精度もアンカーになる
興味深い研究があります。
「約10,000人」より「11,243人」の方が、信頼性が高く感じられるというものです。
端数のある具体的な数字は、「正確に計算された数字」という印象を与えます。
価格設定でも、「5万円」より「49,800円」の方が、「根拠を持って決められた価格」という印象を与えることがあります。
価格の「見え方」を設計する
この記事では、アンカリング効果を使って価格の印象を変える方法をお伝えしました。
同じ価格でも、何と比較されるかで印象は大きく変わります。
比較対象を意図的に設計することで、価格への抵抗を減らし、価値を正しく認識してもらえます。
コース「自信を持って価格を決める」では、アンカリングを含む価格提示の技術を詳しく解説しています。
価格の「見せ方」を改善したい方は、ぜひご覧ください。
